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□メフィストフェレスの止まらない微笑み
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「かも、じゃなくて嫉妬してんだよ」

「…」

「しかもただのクラスメート、ただの女子にな!」

黙り込む山本に対しすらすらと、優位にたったとでも言うかのように獄寺は喋り出す。

「お前、あんなんで嫉妬してたらこの先何百回同じ思いすればいいんだよ?ハッ、頭おかしいんじゃねぇの!オレはただ授業の話してただけ――」


静かな教室に、ダン、と大きな音が響いて、獄寺は少なくともそれに驚き肩を上下させた。


「…」

山本が叩いた机は軽く凹みが生じて、彼の拳は真っ赤になっている。それからゆっくり視線をあげ、獄寺を見た。ただし、例の眼で。蔑むかのように、彼を見るのだ。

「…その頭おかしい奴に、何度も何度も抱かれたのは誰だ?」

「!」

獄寺の目が見開かれる。と同時に、優位に立ったと甚だしくも儚い勘違いをしていたと悟った。

「…オレだよ」

彼は今まで一度たりとも、山本より優位に立ったことなどない。尊敬する十代目の事だって、ベッドの上だって。いつも、山本が一歩進んで、下にいる彼を見下ろしているのだ。


「…ハハッ」

うなだれる獄寺を見て、山本は満足したようだった。止まっていた足を再び獄寺の元へ歩み始め、距離を縮めていった。


「なぁ、獄寺」

「…」

山本の手が獄寺の頬にすっと触れた時、彼は逃げようとそぶりをみせたが、もう片方の山本の手がそれを阻んだ。

「なぁ、獄寺。オレはお前の事好きだぜ?いや、愛してる…だからさ、よく聞けよ」

「!」

山本は獄寺の耳元で笑う。そして告げるのだ。悪魔の言葉を。


「オレ以外の人間の前では笑うなよ、絶対な?よく考えてみ、お前は誰のモノなのか」

「…」

何も言わなくなった獄寺を見てまた満足そうに微笑みながら、山本は「部活行くわ」と言って教室から姿を消した。

「…」

教室は相変わらず静寂を保ち続けている。しかし、しばらくして二度目の物音がした。ガタン、という音がした。


「…クソッ」


それは、獄寺が机を蹴る音だったのか。はたまた、彼自身が床に崩れ落ちた時の音だったのか。







メフィストフェレスの
止まらない微笑み
(それは本当に愛で、嫉妬といえるのか)





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