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□また会いましょう
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その日、午前中は晴れ間が広がっていたにも関わらず、午後になると急に曇り小雨が降り出した。街を歩いていた人々は急な雨に悪態をつきながら小走りで通りを駆け抜ける。
しかし雲雀は違った。別に天気予報を念入りにチェックしていたわけではない。ただ、雲の動きを見ていただけだった。黒い傘をさしながら、行く宛もなく街をさ迷う。それが彼の日課でもあった。
暫くすると、街には人気がなくなり、気付けば通りを歩いているのは雲雀だけになっていた。群れるのが嫌いな雲雀の事だから、この状況はむしろ好都合であった。
「…」
と、ここで不意に、雲雀の足が止まった。雨の匂いと混じって、鼻をつくような鉄臭い匂いがしたからだ。
「…」
この匂いは知っている。言わずもがな、血の匂い。これが好きな訳ではないが、何故だか誘われるようにして、雲雀は足を進めていく。
そして辿り着くは路地裏。人気はもちろんなく、普通の人間なら進んで足を踏み入れないような場所。そこに、雲雀は見た。一人の男が座っているのを。
壁に背を預けて、肩で息をしている。腹部に重傷を負っていた。
「ねぇ」
雲雀はその男に話し掛けた。何故なら、彼が見知っている顔だからだ。全くの赤の他人ならば、自ら声はかけない。
「…その、声は…恭弥くんですか…?」
手負いの男―六道骸は頭を垂れたまま、途切れとぎれに言葉を発した。
「何やってんの」
雲雀は顔色一つ変えない。無惨な姿の彼を嘲笑うかのようであった。
「クフフ…ちょっと失敗しましてね。この様です」
「ふぅん」
暫くの沈黙。その間彼らの耳に届いたのは、ザーといういよいよ本降りになった雨の音のみ。
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