Long Story

□第6章
1ページ/7ページ

Side:YUNHO


果たしてこんな偶然があるのだろうか。
















4枚目のアルバム発売が決定し、日本で雑誌のインタビューを受けることになった。




雑誌のインタビューは数多くこなしていて、その日もいつも通り臨んだ…、はずだった。




ただ1つ、違っていたのは、そこに彼女がいたということ。





服装や雰囲気は違うものの、僕が韓国でパスポートを届けた相手に違いない。






インタビューを受けている間中、ずっと彼女のことが気になってしまった。




僕に気付いていないのだろうか?

それとも敢えて無視している?




結局どちらか分からないまま、インタビューが終わってしまった。




彼女は質問をするでもなく、ずっとその場にいるだけだった。


だから、目を合わせることも、言葉を交わすことも出来なくて。



次の現場に移動しなくてはいけない、と分かっていながら、気付くと僕は自分でも驚く行動を取った。







『チョンさん!』



彼女の名前を呼んでいた。



突然呼ばれて驚く彼女に、インタビューのお礼を言いながら近付く。






そして、彼女に何かを話さなくては…。


必死に紡いだ言葉は



『ジーパンも良かったですけど、ワンピースも似合いますね。』



そんな意味不明なものだった。





後から考えたら、自分でも笑ってしまうほど唐突で。



彼女の表情からして、僕には全く気付いていなかったのだろう。


初対面だと思っている人に、いきなりこんなことを言われたら誰だって不気味だ。



(はぁ、何やってんだろ…。)


僕は珍しく自己嫌悪に陥った。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ