Long Story
□第6章
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Side:YUNHO
果たしてこんな偶然があるのだろうか。
4枚目のアルバム発売が決定し、日本で雑誌のインタビューを受けることになった。
雑誌のインタビューは数多くこなしていて、その日もいつも通り臨んだ…、はずだった。
ただ1つ、違っていたのは、そこに彼女がいたということ。
服装や雰囲気は違うものの、僕が韓国でパスポートを届けた相手に違いない。
インタビューを受けている間中、ずっと彼女のことが気になってしまった。
僕に気付いていないのだろうか?
それとも敢えて無視している?
結局どちらか分からないまま、インタビューが終わってしまった。
彼女は質問をするでもなく、ずっとその場にいるだけだった。
だから、目を合わせることも、言葉を交わすことも出来なくて。
次の現場に移動しなくてはいけない、と分かっていながら、気付くと僕は自分でも驚く行動を取った。
『チョンさん!』
彼女の名前を呼んでいた。
突然呼ばれて驚く彼女に、インタビューのお礼を言いながら近付く。
そして、彼女に何かを話さなくては…。
必死に紡いだ言葉は
『ジーパンも良かったですけど、ワンピースも似合いますね。』
そんな意味不明なものだった。
後から考えたら、自分でも笑ってしまうほど唐突で。
彼女の表情からして、僕には全く気付いていなかったのだろう。
初対面だと思っている人に、いきなりこんなことを言われたら誰だって不気味だ。
(はぁ、何やってんだろ…。)
僕は珍しく自己嫌悪に陥った。
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