Long Story

□第10章
3ページ/5ページ

追いかけてくるチャンミンくんの気配を背中で感じ取りながら、少し早足になる。





エレベーターに乗り、ドアが閉まりかけた時、チャンミンくんが慌てて乗り込んで来た。



『もさ子さん、僕が悪かったですって!機嫌直してください。』





「別に怒ってないです。」





(…素直じゃないなぁ、私。)




いつまでも口を尖らせている私に焦れたのか、チャンミンくんはエレベーターが最上階に着くや否や、私の手をぐいっと引っ張った。



『ほら、見てください』






案内された窓の外には、東京の夜景が一面に広がっていた。



「うわ〜、綺麗!」



振り返ってチャンミンくんを見ると少し照れているようだ。



『もさ子さんにこの夜景を見せたくて…。どうしても内緒でここに連れて来たかったんです。許してください。』



「こっちこそ、意地張ってごめんなさい。どうもありがとう。」



『このレストランでは夜景を見ながら食事出来ますよ。さぁ、食べましょう。』



レストランに入ると、ちょうど東京タワーが見える位置に案内された。


「すごい!東京タワーが見えますね。」


『そうですねぇ!』




チャンミンくんは少しはにかんだような表情で私に微笑んだ。



『ワインをお持ちしました。』


ウエイトレスが給仕してくれたグラスを持ち上げ、私たちはカチンと合わせると口に運んだ。


「美味しいですね。」


それから前菜に始まり、美しく彩られた料理の数々が出される。


夜景とともに料理を堪能しながら、チャンミンくんとの会話も楽しんだ。











ついに最後のデザートが出され、食事も終わりを迎える頃、チャンミンくんの口数が少なくなってきた。



(どうしたんだろ?具合悪いのかな…。)



心配になって俯くチャンミンくんの顔を覗き込む。






すると、チャンミンくんの大きな目にとらえられ、私は胸がドキッとした。


『もさ子さん…。』






今まで見たことないほどの真剣な表情に、私は緊張感に包まれる。




ドクンドクン…。



心臓の鼓動が聞こえる。



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ