Long Story
□第10章
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追いかけてくるチャンミンくんの気配を背中で感じ取りながら、少し早足になる。
エレベーターに乗り、ドアが閉まりかけた時、チャンミンくんが慌てて乗り込んで来た。
『もさ子さん、僕が悪かったですって!機嫌直してください。』
「別に怒ってないです。」
(…素直じゃないなぁ、私。)
いつまでも口を尖らせている私に焦れたのか、チャンミンくんはエレベーターが最上階に着くや否や、私の手をぐいっと引っ張った。
『ほら、見てください』
案内された窓の外には、東京の夜景が一面に広がっていた。
「うわ〜、綺麗!」
振り返ってチャンミンくんを見ると少し照れているようだ。
『もさ子さんにこの夜景を見せたくて…。どうしても内緒でここに連れて来たかったんです。許してください。』
「こっちこそ、意地張ってごめんなさい。どうもありがとう。」
『このレストランでは夜景を見ながら食事出来ますよ。さぁ、食べましょう。』
レストランに入ると、ちょうど東京タワーが見える位置に案内された。
「すごい!東京タワーが見えますね。」
『そうですねぇ!』
チャンミンくんは少しはにかんだような表情で私に微笑んだ。
『ワインをお持ちしました。』
ウエイトレスが給仕してくれたグラスを持ち上げ、私たちはカチンと合わせると口に運んだ。
「美味しいですね。」
それから前菜に始まり、美しく彩られた料理の数々が出される。
夜景とともに料理を堪能しながら、チャンミンくんとの会話も楽しんだ。
ついに最後のデザートが出され、食事も終わりを迎える頃、チャンミンくんの口数が少なくなってきた。
(どうしたんだろ?具合悪いのかな…。)
心配になって俯くチャンミンくんの顔を覗き込む。
すると、チャンミンくんの大きな目にとらえられ、私は胸がドキッとした。
『もさ子さん…。』
今まで見たことないほどの真剣な表情に、私は緊張感に包まれる。
ドクンドクン…。
心臓の鼓動が聞こえる。
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