Long Story

□第10章
2ページ/5ページ

土曜日

チャンミンくんと会う当日


彼は今日も朝から仕事みたいで、私は約束の時間まで家事をして過ごしていた。



そろそろ出かける準備をしなくては…





(まさか今日も焼肉だったりして!?)


そう思った私は、前回の反省を生かし、匂いが付いても良さそうなカジュアルな服を選んだ。



そして、チャンミンくんの事務所へと急いだ。










ちょうど待ち合わせ時刻の少し前にたどり着いた。


彼はまだ来ていないようで、相手を待たせなかったことに安堵した。



ほぅっとため息をついたとき、目の前に一台のタクシーが停まった。



扉が開いたと思うと中から声をかけられる。


『もさ子さん、乗ってください。』


急くように後部座席に乗り込んだ私は、チャンミンくんの隣に座った。


「こんばんは!」



『今日は来てくださってありがとうございます。』


「いえいえ、お誘い嬉しかったですよ。」


『良かったです。じゃあ食事に行きましょうか。』



チャンミンくんは予め行き先を運転手に告げていたようで、私たちを乗せたタクシーは目的地へと走り始めた。












「え!?」



タクシーに導かれた先にあったのは、一泊何万円もする高級ホテルだった。






当のチャンミンくんは慌てる私に目もくれず、ドアマンのいる入口へと歩を進めていく。




「ちょ、チャンミンくん!」





思わず彼の背中にすがるように呼び止める。




「私、また焼肉かと思って、すごくラフな格好で来ちゃったんだけど…。」





『…ぷっ!あはは!』


眉をハの字にして笑うチャンミンくん。




「ちょっと、人が真剣に悩んでるのにぃ…」


少し拗ねた口調で言うと、チャンミンくんは笑うのを止めた。



『僕が行き先を言っていなかったから、すみません。その格好なら大丈夫ですから。それにしても焼肉って…。』


そう言ってまた吹き出しそうな彼をギロリと睨むと、私は入口から豪華だけれどセンスの良いロビーへと入っていった。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ