Long Story
□第10章
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土曜日
チャンミンくんと会う当日
彼は今日も朝から仕事みたいで、私は約束の時間まで家事をして過ごしていた。
そろそろ出かける準備をしなくては…
(まさか今日も焼肉だったりして!?)
そう思った私は、前回の反省を生かし、匂いが付いても良さそうなカジュアルな服を選んだ。
そして、チャンミンくんの事務所へと急いだ。
ちょうど待ち合わせ時刻の少し前にたどり着いた。
彼はまだ来ていないようで、相手を待たせなかったことに安堵した。
ほぅっとため息をついたとき、目の前に一台のタクシーが停まった。
扉が開いたと思うと中から声をかけられる。
『もさ子さん、乗ってください。』
急くように後部座席に乗り込んだ私は、チャンミンくんの隣に座った。
「こんばんは!」
『今日は来てくださってありがとうございます。』
「いえいえ、お誘い嬉しかったですよ。」
『良かったです。じゃあ食事に行きましょうか。』
チャンミンくんは予め行き先を運転手に告げていたようで、私たちを乗せたタクシーは目的地へと走り始めた。
「え!?」
タクシーに導かれた先にあったのは、一泊何万円もする高級ホテルだった。
当のチャンミンくんは慌てる私に目もくれず、ドアマンのいる入口へと歩を進めていく。
「ちょ、チャンミンくん!」
思わず彼の背中にすがるように呼び止める。
「私、また焼肉かと思って、すごくラフな格好で来ちゃったんだけど…。」
『…ぷっ!あはは!』
眉をハの字にして笑うチャンミンくん。
「ちょっと、人が真剣に悩んでるのにぃ…」
少し拗ねた口調で言うと、チャンミンくんは笑うのを止めた。
『僕が行き先を言っていなかったから、すみません。その格好なら大丈夫ですから。それにしても焼肉って…。』
そう言ってまた吹き出しそうな彼をギロリと睨むと、私は入口から豪華だけれどセンスの良いロビーへと入っていった。
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