□むかでの室、へびの室
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うさぎはそのひりひりする、ひどい痛みにたまりかねて、おんおん泣き伏しておりました。
そうすると、いちばんあとからお通りかかりになった、お供の大国主神がそれをご覧になって、
「おいおいうさぎさん、どうしてそんなに泣いているの」
とやさしく聞いてくださいました。
うさぎは泣き泣き、
「私は、もと隠岐の島におりましたうさぎでございますが、この本土へ渡ろうと思いましても、渡るてだてがございませんものですから、海の中のわにをだまして、いったい、おまえとわしとどっちがみうちが多いだろう、ひとつくらべてみようじゃないか、おまえはいるだけのけん族をすっかりつれて来て、ここから、あの向こうのはての、気多のみさきまでずっと並んでみよ、そうすればおれがその背中の上をつたわって、かぞえてやろうと申しました。
すると、わにはすっかりだまされまして、出てまいりますもまいりますも、それはそれは、うようよと、まっくろに集まってまいりました。
そして、私の申しましたとおりに、この海ばたまでずらりと一列に並びました。
私は五十八十と数をよみながら、その背なかの上をどんどん渡って、もう一足でこの海ばたへ上がろうといたしますときに、やあいまぬけのわにめ、うまくおれにだまされたァいとはやしたてますと、いちばんしまいにおりましたわにが、むっと怒って、いきなり私をつかまえまして、このとおりにすっかりきものをひっぺがしてしまいました。
そこであすこのところへ伏しころんで泣いておりましたら、さきほどここをお通りになりました八十神たちが、いいことを教えてやろう、これこれこうしてみろとおっしゃいましたので、そのとおりに潮水を浴びて風に吹かれておりますと、からだじゅうの皮がこわばって、こんなにびりびり裂けてしまいました」