□『クリスマス・キャロル』
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そして、万に一つの間違いもない取引でその日を荘厳にした。
マアレイの葬儀のことを云ったので、私は出発点に立ち戻る気になった。
マアレイが死んでいたことには、毛頭疑いがない。
この事は明瞭に了解して置いて貰わなければならない。
そうでないと、これから述べようとしている物語から何の不思議なことも出て来る訳に行かない。
あの芝居の始まる前に、ハムレットの阿父さんは死んだのだということを充分に呑み込んでいなければ、阿父さんが夜毎に、東風に乗じて、自分の城壁の上をふらふらさまよい歩いたのは、誰か他の中年の紳士が文字通りにその弱い子息の心を脅かしてやるために、日が暮れてから微風の吹く所へ――まあ例えばセント・パウル寺院の墓場へでも――やみくもに出掛けるよりも、別段変ったことは一つもない。
スクルージは老マアレイの名前を決して塗り消さなかった。
その後幾年もその名は倉庫の戸の上にそのままになっていた。
すなわちスクルージ・エンド・マアレイと云うように。
この商会はスクルージ・エンド・マアレイで知られて居た。