□『去年の木』
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 いっぽんの木と、いちわの小鳥とはたいへんなかよしでした。
 
小鳥はいちんちその木の枝で歌をうたい、木はいちんちじゅう小鳥の歌をきいていました。

 けれど寒い冬がちかづいてきたので、小鳥は木からわかれてゆかねばなりませんでした。

「さよなら。また来年きて、歌をきかせてください。」

と木はいいました。

「え。それまで待っててね。」

と、小鳥はいって、南の方へとんでゆきました。

 春がめぐってきました。

野や森から、雪がきえていきました。

 小鳥は、なかよしの去年の木のところへまたかえっていきました。
 
 ところが、これはどうしたことでしょう。

木はそこにありませんでした。

根っこだけがのこっていました。
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