□私の文学
1ページ/10ページ

 私の文学――編集者のつけた題である。

 この種の文章は往々にして、いやみな自己弁護になるか、卑屈な謙遜になるか、傲慢な自己主張になりやすい。

さりげなく自己の文学を語ることはむずかしいのだ。

 しかし、文学というものは、要するに自己弁護であり、自己主張であろう。

そして、自己を弁護するとは、即ち自己を主張することなのだ。

 私の文学は、目下毀誉褒貶の渦中にある。

ほめられれば一応うれしいし、けなされれば一応面白くない。

しかし一応である。

 なぜなら、毀も貶も、誉も褒も、つねに誤解の上に立っていると思うからだ。

もっとも、作家というものは結局誤解のくもの巣にひっ掛った蠅のようなものだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ