□とんぼのお歌
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       一

 大長谷皇子は、まもなく雄略天皇としてご即位になり、大和の朝倉宮にお移りになりました。

皇后には、例の大日下王のお妹さまの若日下王をお立てになりました。

 その若日下王が、まだ河内の日下というところにいらしったときに、ある日天皇は、大和からお近道をおとりになり、日下の直越という峠をお越えになって、王のところへおいでになったことがありました。

 そのとき天皇は、山の上から四方の村々をお見わたしになりますと、向こうの方に、一軒、むねにかつお木をとりつけているうちがありました。

かつお木というのは、天皇のお宮か、神さまのお社かでなければつけないはずの、かつおのような形をした、むねの飾りです。

 天皇はそれをご覧になって、

「あの家はだれの家か」

とおたずねになりました。

「あれは志幾の大県主のうちでございます」

と、お供の者がお答え申しました。
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