□大鈴小鈴
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一
仁徳天皇には皇子が五人、皇女が一人おありになりました。
その中で伊邪本別(いざほわけ)、水歯別(みずはわけ)、若子宿禰(わくごのすくね)のお三方がつぎつぎに天皇のお位におのぼりになりました。
いちばんのお兄上の伊邪本別皇子は、お父上の亡きおあとをおつぎになって、同じ難波のお宮で、履仲天皇としてお位におつきになりました。
そのご即位のお祝いのときに、天皇はお酒をどっさり召しあがって、ひどくお酔いになったままおやすみになりました。
すると、じき下の弟さまの中津王が、それをしおに天皇をお殺し申してお位を取ろうとおぼしめして、いきなりお宮へ火をおつけになりました。
火の手は、たちまちぼうぼうと四方へ燃え広がりました。
お宮じゅうの者はふいをくって大あわてにあわて騒ぎました。
天皇は、それでもまだ前後もなくおよっていらっしゃいました。