□八咫烏
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一
鵜茅草葺不合命(うがやふきあえずのみこと)は、ご成人の後、玉依媛を改めてお妃にお立てになって、四人の男のお子をおもうけになりました。
この四人のごきょうだいのうち、二番めの稲氷命は、海をこえてはるばると、常世国という遠い国へお渡りになりました。
ついで三番めの若御毛沼命(わかみけぬのみこと)も、お母上のお国の、海の国へ行っておしまいになり、いちばん末の弟さまの神倭伊波礼毘古命(かんやまといわれひこのみことが、高千穂の宮にいらしって、天下をお治めになりました。
しかし、日向はたいへんにへんぴで、政をお聞きめすのにひどくご不便でしたので、命はいちばん上のおあにいさまの五瀬命とお二人でご相談のうえ、
「これは、もっと東の方へ移ったほうがよいであろう」
とおっしゃって、軍勢を残らずめしつれて、まず筑前国に向かっておたちになりました。
その途中、豊前の宇佐にお着きになりますと、その土地の宇佐都比古、宇佐都比売という二人の者が、御殿をつくってお迎え申し、てあつくおもてなしをしました。