□満潮の玉、干潮の玉
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       一

 三人のごきょうだいは、まもなく大きな若い人におなりになりました。

その中でおあにいさまの火照命は、海でりょうをなさるのがたいへんおじょうずで、いつもいろんな大きな魚や小さな魚をたくさんつってお帰りになりました。

末の弟さまの火遠理命は、これはまた、山でりょうをなさるのがそれはそれはお得意で、しじゅういろんな鳥や獣をどっさりとってお帰りになりました。

 あるとき弟の命は、おあにいさまに向かって、

「ひとつためしに二人で道具を取りかえて、互いに持ち場をかえて、りょうをしてみようではありませんか」

とおっしゃいました。

 おあにいさまは、弟さまがそう言って三度もお頼みになっても、そのたんびにいやだと言ってお聞き入れになりませんでした。


しかし弟さまが、あんまりうるさくおっしゃるものですから、とうとうしまいに、いやいやながらお取りかえになりました。

 弟さまは、さっそくつり道具を持って海ばたへお出かけになりました。

しかし、つりのほうはまるでおかってがちがうので、いくらおあせりになっても一ぴきもおつれになれないばかりか、しまいにはつり針を海の中へなくしておしまいになりました。
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