□きじのお使い
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       一

 そのうちに大空の天照大神は、お子さまの天忍穂耳命(あめのおしほみみのみこと)に向かって、

「下界に見える、あの豊葦原水穂国は、おまえが治めるべき国である」

とおっしゃって、すぐにくだって行くように、お言いつけになりました。

命はかしこまっておりていらっしゃいました。

しかし天の浮橋の上までおいでになって、そこからお見おろしになりますと、下では勢いの強い神たちが、てんでんに暴れまわって、大さわぎをしているのが見えました。

命は急いでひきかえしていらしって、そのことを大神にお話しになりました。

 それで大神と高皇産霊神とは、さっそく天安河の河原に、おおぜいの神々をすっかりお召し集めになって、

「あの水穂国は、私たちの子孫が治めるはずの国であるのに、今あすこには、悪強い神たちが勢い鋭く荒れまわっている。あの神たちを、おとなしくこちらの言うとおりにさせるには、いったいだれを使いにやったものであろう」

とこうおっしゃって、みんなにご相談をなさいました。

 すると例のいちばん考え深い思金神が、みんなと会議をして、

「それには天菩比神をおつかわしになりますがよろしゅうございましょう」

と申しあげました。
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