□マッチ売りの少女
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マッチ売りの少女
The Little Match-Seller
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
大久保ゆう訳
それは、ひどく寒いおおみそかの夜のことでした。
あたりはもうまっくらで、こんこんと雪が降っていました。
寒い夜の中、みすぼらしい一人の少女が歩いていました。
ボウシもかぶらず、はだしでしたが、どこへ行くというわけでもありません。
行くあてがないのです。
ほんとうは家を出るときに一足の木ぐつをはいていました。
でも、サイズが大きくぶかぶかで、役に立ちませんでした。
実はお母さんのものだったので無理もありません。
道路をわたるときに、二台の馬車がとんでもない速さで走ってきたのです。
少女は馬車をよけようとして、木ぐつをなくしてしまいました。
木ぐつの片方は見つかりませんでした。
もう片方は若者がすばやくひろって、
「子供ができたときに、ゆりかごの代わりになる。」
と言って、持ちさってしまいました。
だから少女はその小さなあんよに何もはかないままでした。
あんよは寒さのために赤くはれて、青じんでいます。
少女の古びたエプロンの中にはたくさんのマッチが入っています。
手の中にも一箱持っていました。