□はだかの王さま
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はだかの王さま
The Emperor's New Suit
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
大久保ゆう訳


 むかしむかし、とある国のある城に王さまが住んでいました。

王さまはぴっかぴかの新しい服が大好きで、服を買うことばかりにお金を使っていました。

王さまののぞむことといったら、いつもきれいな服を着て、みんなにいいなぁと言われることでした。

戦いなんてきらいだし、おしばいだって面白くありません。

だって、服を着られればそれでいいんですから。

新しい服だったらなおさらです。

一時間ごとに服を着がえて、みんなに見せびらかすのでした。

ふつう、めしつかいに王さまはどこにいるのですか、と聞くと、

「王さまは会議室にいらっしゃいます。」

と言うものですが、ここの王さまはちがいます。

「王さまは衣装部屋にいらっしゃいます。」

と言うのです。

 城のまわりには町が広がっていました。

とても大きな町で、いつも活気に満ちていました。

世界中のあちこちから知らない人が毎日、おおぜいやって来ます。

 ある日、二人のさぎ師が町にやって来ました。

二人は人々に、自分は布織り職人だとウソをつきました。

それも世界でいちばんの布が作れると言いはり、人々に信じこませてしまいました。

「とてもきれいな色合いともようをしているのだけれど、この布はとくべつなのです。」

とさぎ師は言います。
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