□旅なかま
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旅なかま
REJSEKAMMERATEN
ハンス・クリスティアン・アンデルセン Hans Christian Andersen
楠山正雄訳
かわいそうなヨハンネスは、おとうさんがひどくわずらって、きょうあすも知れないほどでしたから、もうかなしみのなかにしずみきっていました。
せまいへやのなかには、ふたりのほかに人もいません。
テーブルの上のランプは、いまにも消えそうにまばたきしていて、よるももうだいぶふけていました。
「ヨハンネスや、おまえはいいむすこだった。」
と、病人のおとうさんはいいました。
「だから、世の中へでても、神さまがきっと、なにかをよくしてくださるよ。」
そういって、やさしい目でじっとみながら、ふかいため息をひとつつくと、それなり息をひきとりました。
それはまるでねむっているようでした。
でも、ヨハンネスは泣かずにいられません、この子はもう、この世の中に、父親もなければ、母親もないし、男のきょうだいも、女のきょうだいもないのです。
かわいそうなヨハンネス。
ヨハンネスは、寝台のまえにひざをついて、死んだおとうさんの手にほおずりして、しょっぱい涙をとめどなくながしていました。
そのうち、いつか目がくっついて、寝台のかたい脚にあたまをおしつけたなり、ぐっすり寝こんでしまいました。
寝ているうちに、ヨハンネスは、ふしぎな夢をみました。
お日さまとお月さまとがおりて来て礼拝をするところをみました。
それから、なくなったおとうさんが、またげんきで、たっしゃで、いつもほんとうにうれしいときするようなわらい声をきかせました。
ながい、うつくしい髪の毛の上に、金のかんむりをかぶったうつくしいむすめが、ヨハンネスに手をさしのべました。
するとおとうさんが
「ごらん、なんといいおよめさんをおまえはもらったのだろう。これこそ世界じゅうふたりとないうつくしいひとだ。」
といいました。