□おやゆび姫
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おやゆび姫
Little Tiny or Thumbelina
ハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen
大久保ゆう訳


 むかし、一人の女の人がいました。

その女の人はかわいい子どもをさずかりたいと思っていました。

けれども、願いはいっこうにかないませんでした。

心から強く願っても、かないませんでした。

日々をすごすうち、ついにいてもたってもいられなくなって、魔法使いのおばあさんのところへ行きました。

 女の人は言いました。

「かわいい子どもがほしいのです。どうしてもほしいのですが、どうにもならないのです。どうすれば子どもが出来るのですか。」

 すると、魔法使いのおばあさんは答えます。

「ふぉっ、ふぉ。そんなことはたやすいことよ。ごらんあれ、ここに一つぶの大麦がある。これをそんじょそこらの大麦と思いなさんな。畑にまく麦や、ニワトリに食べさせる麦とは別物じゃ。特別な大麦だよ。これをな、植木ばちの中に植えるのじゃ。すると、何かが起こるはずじゃよ。ふぉっ、ふぉ。」

 それを聞いて女の人は、

「その大麦をわたしにください。」

とたのみました。

「しかし、これは銀貨十二枚ないとわたせんよ。それでもよいのかな?」

と、魔法使いのおばあさんがたずねると、女の人はこくりとうなずきました。

おばあさんは大麦を女の人の手の中ににぎらせました。

「ありがとうございます。」

と、女の人はお礼を言って、魔法使いのおばあさんに銀貨を十二枚わたしました。

 女の人は家に急いで帰りました。
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