□赤いくつ
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赤いくつ
DE RODE SKO
ハンス・クリスティアン・アンデルセン Hans Christian Andersen
楠山正雄訳
あるところに、ちいさい女の子がいました。
その子はとてもきれいなかわいらしい子でしたけれども、貧乏だったので、夏のうちははだしであるかなければならず、冬はあつぼったい木のくつをはきました。
ですから、その女の子のかわいらしい足の甲は、すっかり赤くなって、いかにもいじらしく見えました。
村のなかほどに、年よりのくつ屋のおかみさんが住んでいました。
そのおかみさんはせっせと赤いらしゃの古切れをぬって、ちいさなくつを、一足こしらえてくれていました。
このくつはずいぶんかっこうのわるいものでしたが、心のこもった品で、その女の子にやることになっていました。
その女の子の名はカレンといいました。
カレンは、おっかさんのお葬式の日に、そのくつをもらって、はじめてそれをはいてみました。
赤いくつは、たしかにおとむらいにはふさわしくないものでしたが、ほかに、くつといってなかったので、素足の上にそれをはいて、粗末な棺おけのうしろからついていきました。
そのとき、年とったかっぷくのいいお年よりの奥さまをのせた、古風な大馬車が、そこを通りかかりました。
この奥さまは、むすめの様子をみると、かわいそうになって、
「よくめんどうをみてやりとうございます。どうか、この子を下さいませんか。」
と、坊さんにこういってみました。
こんなことになったのも、赤いくつのおかげだと、カレンはおもいました。
ところが、その奥さまは、これはひどいくつだといって、焼きすてさせてしまいました。