□うし飼、うま飼
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二
お二人は、角刺のお宮でだんだんにご成人になりました。
あるとき袁祁王は、歌がきといって、男や女がおおぜいいっしょに集まって、歌を歌いかわす催しへおでかけになりました。
そのとき菟田首という人の娘で、王がかねがねお嫁にもらおうと思っておいでになる、大魚という美しい女の人も来あわせておりました。
するとそのころ、臣下の中でおそろしく幅をきかせていた志毘臣というものが、その大魚の手を取りながら、袁祁王にあてつけて、
「ああ、おかしやおかしや、お宮の屋根がゆがんでしまった」
と歌いだし、そのあとの歌のむすびを王にさし向けました。
王は、すぐにそれをお受けになって、
「それは大工がへただからゆがんだのだ」
とお歌いになりました。
すると志毘は重ねて、
「いや、どんなに王があせられても、わしがゆいめぐらした、八重のしばがきの中へははいれまい。大魚とわしとの仲をじゃますることはできまい」
と歌いかけました。