□うし飼、うま飼
3ページ/13ページ
「男らしい大きな男が、太刀のつかに赤い飾りをつけ、太刀のおには赤いきれをつけて、いかにも人目を引く姿をしていても、深くおい茂ったたけやぶの後ろにはいれば、隠れて目にも見えない」
と、こう歌いだして、たけやぶという言葉を引き出した後、
「そんなたけやぶの大きなたけを割って、それを並べてこしらえた、八絃琴は、それはそれは調子がよく整って申し分がない。
今から五代前の履仲天皇は、ちょうどその琴のしらべと同じように、どこまでもりっぱに天下をお治めになったお方である。
その皇子に忍歯王とおっしゃる方がいらしった。みんなの人々よ、われわれ二人は、その忍歯王の子であるぞ」
と歌いました。
小楯はそれを聞くとびっくりして、床からころがり落ちてしまいました。
そして大あわてにあわてて、さっそくみんなを残らず追い出したうえ、意外なところでお見出し申した、意富祁、袁祁のお二人を左右のおひざにお抱え申しながら、お二人の今日までのご辛苦をお察し申しあげて、ほろほろと涙を流して泣きました。
小楯はそれから急いでみんなを集めて、仮のお宮をつくり、お二人をその中にお移し申しました。
そして、すぐに大和へ早うまの使いを立てて、おんおば上の飯豊王にご注進申しあげました。
飯豊王はそれをお聞きになると、大喜びにお喜びになり、すぐにお二人をお呼びのぼせになりました。