□とんぼのお歌
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 天皇はお供の者をもって、「これはただいま途中で手に入れたいぬだ。珍しいものだから進物にする」

とおっしゃって、さっきの白いぬを若日下王におくだしになりました。

しかし王は、

「きょう天皇は、お日さまをお背中になすっておこしになりました。これではお日さまに対しておそれおおうございますので、きょうはお目にかかりません。そのうち、私のほうからすぐにまかり出まして、お宮へお仕え申しあげます」

 こう言って、おことわりをなさいました。

 天皇はお帰りのお途中、山の上にお立ちになって、若日下王のことをお慕いになるお歌をおよみになり、それを王へお送りになりました。

王はそれからまもなくお宮へおあがりになりました。
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