□とんぼのお歌
3ページ/13ページ
天皇はお供の者をもって、「これはただいま途中で手に入れたいぬだ。珍しいものだから進物にする」
とおっしゃって、さっきの白いぬを若日下王におくだしになりました。
しかし王は、
「きょう天皇は、お日さまをお背中になすっておこしになりました。これではお日さまに対しておそれおおうございますので、きょうはお目にかかりません。そのうち、私のほうからすぐにまかり出まして、お宮へお仕え申しあげます」
こう言って、おことわりをなさいました。
天皇はお帰りのお途中、山の上にお立ちになって、若日下王のことをお慕いになるお歌をおよみになり、それを王へお送りになりました。
王はそれからまもなくお宮へおあがりになりました。