□朝鮮征伐
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 すると神さまはたいそうお怒りになって、

「そんな、わしの言葉をうたぐったりするものには、この国も任せてはおかれない。あなたはもう、さっさと死んでおしまいなさるがよい」

と、おおせになりました。

 宿禰はその言葉を聞くと、びっくりして、

「これはたいへんでございます。陛下よ、どうぞもっとお琴をおひきあそばしませ」

と、あわててご注意申しあげました。

 天皇は仕方なしに、しぶしぶお琴をおひき寄せになって、しばらくの間、申しわけばかりにぽつぽつひいておいでになりましたが、そのうちにまもなく、ふッつりとお琴の音がとだえてしまいました。

 宿禰はへんだと思って、灯をさし上げて見ますと、天皇はもはやいつのまにかお息が絶えて、その場にお倒れになっていらっしゃいました。

 皇后も宿禰も、神さまのお罰に驚き怖れて、急いでそのお空骸を仮のお宮へお移し申しました。

そしてまず第一番に、神さまのお怒りをおなだめ申すために、そのあたりの国じゅうで生きた獣の皮を剥いだり、獣を逆はぎにしたものをはじめとして、田の畔をこわしたもの、溝をうめたもの、汚ないものをひりちらしたもの、そのほか言うも穢らわしいような、さまざまの汚ない罪を犯したものたちをいちいちさがし出させて、御幣をとって、はらい清めて、国じゅうのけがれをすっかりなくしておしまいになりました。
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