□赤い盾、黒い盾
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敵の大将の建波邇安王(たけはにやすのみこ)は、すぐにそれに応じて、大きな矢をひゅうッと射放しましたが、その矢はだれにもあたらないで、わきへそれてしまいました。

それでこんどはこちらから国夫玖命が射かけますと、その矢はねらいたがわず建波邇安王を刺し殺してしまいました。

 敵の軍勢は、王が倒れておしまいになると、たちまち総くずれになって、どんどん逃げだしてしまいました。

国夫玖命の兵はどんどんそれを追っかけて、河内の国のある川の渡しのところまで追いつめて行きました。

 すると賊兵のあるものは、苦しまぎれにうんこが出て下ばかまを汚しました。

 こちらの軍勢はそいつらの逃げ道をくいとめて、かたっぱしからどんどん切り殺してしまいました。

そのたいそうな死がいが川に浮かんで、ちょうど、うのように流れくだって行きました。

 大毘古命は天皇にそのしだいをすっかり申しあげて、改めて北陸道へ出発しました。

 そのうちに大毘古命の親子をはじめ、そのほか方々へお遣しになった人々が、みんなおおせつかった地方を平らげて帰りました。

そんなわけで、もういよいよどこにも天皇におさからいする者がなくなって、天下は平らかに治まり、人民もどんどん裕福になりました。

それで天皇ははじめて人民たちから、男から弓端の調といって、弓矢でとった獲物の中のいくぶんを、女からは手末の調といって、紡いだり、織ったりして得たもののいくぶんを、それぞれ貢物としておめしになりました。

 天皇はまた、人民のために方々へ耕作用の池をお作りになりました。

天皇の高いお徳は、後の代からも、いついつまでも永くおほめ申しあげました。
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