□きじのお使い
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 高皇産霊神はその矢を手に取ってご覧になりますと、矢の羽根に血がついておりました。

 高皇産霊神は、

「この矢は天若日子につかわした矢だが」

とおっしゃって、みんなの神々にお見せになった後、

「もしこの矢が、若日子が悪い神たちを射たのが飛んで来たのならば、若日子にはあたるな。もし若日子が悪い心をいだいているなら、かれを射殺せよ」

とおっしゃりながら、さきほどの矢が通って来た空の穴から、力いっぱいにお突きおろしになりました。

 そうするとその矢は、若日子がちょうど下界であおむきに寝ていた胸のまん中を、ぷすりと突き刺して一ぺんで殺してしまいました。

 若日子のお嫁の下照比売は、びっくりして、大声をあげて泣きさわぎました。

 その泣く声が風にはこばれて、大空まで聞こえて来ますと、若日子の父の天津国玉神と、若日子のほんとうのお嫁と子供たちがそれを聞きつけて、びっくりして、下界へおりて来ました。

そして泣き泣きそこへ喪屋といって、死人を寝かせておく小屋をこしらえて、がんを供物をささげる役に、さぎをほうき持ちに、かわせみをお供えの魚取りにやとい、すずめをお供えのこめつきに呼び、きじを泣き役につれて来て、八日八晩の間、若日子の死がいのそばで楽器をならして、死んだ魂を慰めておりました。

 そうしているところへ、大国主神の子で、下照比売のおあにいさまの高日子根神がお悔みに来ました。
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