□きじのお使い
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 思金神は、「それでは名鳴女(ななきめ)というきじがよろしゅうございましょう」と申しあげました。

大神たちお二人はそのきじをお召しになって、

「おまえはこれから行って天若日子を責めてこい。そちを水穂国へおくりだしになったのは、この国の神どもを説き伏せるためではないか、それだのに、なぜ八年たってもご返事をしないのか、と言って、そのわけを聞きただしてこい」

とお言いつけになりました。

 名鳴女は、はるばると大空からおりて、天若日子のうちの門のそばの、かえでの木の上にとまって、大神からおおせつかったとおりをすっかり言いました。

 すると若日子のところに使われている、天佐具売という女が、その言葉を聞いて、

「あすこに、いやな鳴き声を出す鳥がおります。早く射ておしまいなさいまし」

と若日子にすすめました。

 若日子は、「ようし」と言いながら、かねて大神からいただいて来た弓と矢を取り出して、いきなりそのきじを射殺してしまいました。

すると、その当たった矢が名鳴女の胸を突き通して、さかさまに大空の上まではねあがって、天安河の河原においでになる、天照大神と高皇産霊神とのおそばへ落ちました。
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