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12/01(Mon) 00:40
ジョニィ×元貴族主人公
君が描いた夢ならば
貴方は大人になっていく
私はずっとお傍にいたいのですけれど
貴方が一人で旅立ちたいと言うから
私は遠くから見守っていますわ
「…今、この家から出て行かれるとおっしゃいましたか?」
白く波打つシーツが幾重にも連なる。青く澄み渡る空の下、いつものように洗濯物を干していた私の元へ、やけに真剣な面持ちで彼は現れました。昨日は雨が降ったから大地が少し柔らかく湿っていて、彼の足跡…車輪がくっきりと刻み込まれています。その刻印が迷うことなくここまで刻まれているから、私は一抹の不安を覚えながら彼を見ました。ぐちゃぐちゃに大地がぬかるんでいる訳ではないのですが、車椅子に乗っている以上多少のコントロールを土に持っていかれると思うのです。しかし彼を追いかけるように続く窪みは歪みなく大地に残されていて、余程慎重にこの場へ来たのは言葉にするよりも明白でした。
覚悟を要して決断した事柄を、私に告げようとしている。
私はシーツを干す手を止めることが出来ず、彼に背を向けたまま体を強張らせました。なんだか聞いてはいけないような気がしたのです。聞いたら、もう戻れなくなるようなそんな予感までしたのです。訪れた沈黙に耐えかねて後ろを一瞥すると、彼は少しだけ躊躇って、俯いて、眉を顰めて、少しだけ困ったような表情で私に言葉を紡ぎました。
その言葉に思わず私は反芻してしまいました。どうか聞き違いであって欲しいと願いました。しかし彼は重々しく頷くものだから、私は、真っ白なシーツを大地へと手離してしまいました。
「どうして、とお聞きしてもよろしいでしょうか」
地面に触れた白がじわりと茶色に斑に染まっていく。そんなことはどうでもよくて、ゆっくりと振り返って彼に問いました。
綺麗な黄金の髪は、俯く彼の顔を隠すように零れました。
「理由なんてない。でも出て行くって決めたんだ」
そんな子供じみた発言で、私が納得する筈がありません。
わかっていながら彼は、あえてそう言うのです。
「本気なのですか?」
「ああ。もう決めた」
「お一人で?」
「ああ。俺一人で出て行く」
「私を残して?」
「…………ああ」
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飽 き た 2(´・ω・`)
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