DMC
□つい、
1ページ/1ページ
ぱたん、と扉の閉まる音がする。
2階の兄の部屋が閉まった音だ。
弟のダンテはというと、兄、バージルが去ったあとの目の前のテーブルを見つめていた。
「…………これ…」
1階で本を読んでいたバージルの忘れ物。
――――…バージル愛用の眼鏡。
「掛けてみっか………」
バージルの全てを知りたい。バージルと全てを共有したい。
それは恋人ならではの願い。
そう願うならば、しないわけにはいかないだろう!とダンテはテーブルね上に静かに鎮座していた眼鏡を手に取り、目を閉じたまま掛けてみる。
「―――…?!」
目を開けると、がつんと頭を殴られたかのように頭痛がした。
だが、周りには人はおろか、虫一匹さえいない。
ダンテは瞬時に理解できなかったようで、眉間にしわを寄せた。
度が半端なく合っていなかったのだろう。
半魔ともあろう者が立ちくらみに似た症状を引き起こしている。
―――と、そこへ忘れ物に気づいたバージルが一階へと下りてきた。
「何をしている。」
ふらふらと自分に向かってくるダンテに対して吐き捨てると、ダンテはバージルに問う。
「なぁ、バージル…。これ…なのかな…。頭ぐわんぐわんするんだけど…。」
「(俺の眼鏡!)かえせ!」
すっ、と外してバージルに眼鏡を手渡すと、それと同時にダンテいわく「頭ぐわんぐわん」は止まった。
「あれ?まじかよ。」
「…度が合っていないんだろ。お前は目が良いからな。」
そうか、とだけ言ってからダンテはソファーに寝そべった。
すでに瞼が落ちてくる寸前になる。
「あー、頭痛かった。次からはぜってー挑戦しねえ。」
そんなダンテを見てからバージルは自室へと向かう。
【つい、】
くすっ、と笑い声が階段から聞こえてきたのは秘密。
(良い夢を見ろよ、ダンテ。)
20091018 ナミオトカノン