剣
□正当堕落論
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貴方の総てが欲しいから。
貴方の総てを自分だけに向けて欲しいから。
それは、言い訳に代えられる?
「今年の一年、すごいの入って来たな」
初めて越前を見た瞬間。
こいつだと、そう思った。
ずば抜けた才能、そして見る者を魅き付けるその不思議な魅力。真っ直ぐに何かを見つめる瞳。
欲しかったのではない。
欲しがらせる事が必要だったのだ。
「お前は青学の柱になれ」
目の前に餌をちらつかせると、好奇心旺盛なその猫は俺の思惑に見事はまってくれた。
本当は自分が餌である事にも気付かないまま。
おびき寄せて、誘われて。
きっかけさえあればあとは早い。
「んッえちぜっ……」
「かわいいっスね」
可愛い後輩との背徳の情事に容易く溺れられるこの汚い身体が、酷く憎らしく、誇らしくて。
罪悪感など、最初から存在しないものがこの胸に湧き上がるはずもなかった。
「……俺、アンタの事本気で好きになったかも」
「………越…」
「でもさ―――アンタはその瞳に誰を映してる訳?」
―――最初は笑顔だけで良かったのに―――