剣
□聖なる夜に雪花を
1ページ/3ページ
堕ちる結晶。
無垢な純白さは誰の骨?
この聖夜に奇跡を願い。
ただひたすらに、君を待つ。
『手塚、クリスマスイヴは一緒に出掛けようよ』
『構わないが…何処に行くんだ?』
『僕がちゃんと用意しておくから。じゃあいつもの公園で待ち合わせしよう』
『ああ』
『良かった。約束だよ、僕すごく楽しみにしてるから』
カーテンを開けると、窓の外にはもう既に大粒の雪がちらつき始めていた。
今夜はホワイトクリスマス、か。
街はもう、手を繋ぎ幸せそうに歩く恋人達で溢れているだろう。僕もそろそろ行かないと。
厚手のコートを着て玄関で靴をトントン、と整える。後ろから、クリスマスだから寮から(無理矢理)帰って来(させ)ていた祐太の声がした。
「兄貴、どっか行くのかよ」
「ふふ。クリスマスだからね、デートだよ」
「デート、って……」
「明日はちゃんと家で祝うから。じゃあ行って来ます」
「あ、ちょっと兄貴!!」
慌てる祐太にいつものように笑い掛けドアを閉めた。肌に触れた空気は氷のようで。
薄く雪が積もる道を、あの場所まで歩き出す。
せっかく帰って来させたのに、祐太にはちょっと悪いけど。
でも今日は、今日だけは。
僕を待ってるひとが、いるから。
愛しい君はその髪を冷たさに震わせてはいないだろうか。
そう思うと、白く足跡を付けて行くこの足を速めない訳にはいかなかった。