剣
□everblooming
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人に喜ばれて咲く花ばかりじゃない。
祝福されない花もこの世にはあるんだって事を、僕は知ってしまった―――……。
ケシキ
いつもの帰り道。見慣れた風景に踏み慣れた道、そして僕の隣を歩く手塚。
ただ一つ違っているのは、僕達を包んでいるのが暗闇ではなく、穏やかな陽光だという事だ。
「良い天気だね」
「あぁ」
「部活、出来なくて残念だった?」
そう、今日は学校の都合で部活動が全て禁止になった。
テニス部の僕達が平日のこんな時間に外を歩くなんて滅多にない。他の人(英二とか桃)なら喜んで遊び回るんだろうけど……
ここに、いまいち喜べてない人が一人。
「まぁな……だが学校の都合ならば仕方がない」
「そうだね」
それでも聞き分けの良い手塚が何だか可愛くて。隣で思わず微笑ってしまう。
手塚を好きになってから、些細な事が目にとまるようになった。些細な事で微笑えるようになった。
でもそれと同時に、ふと淋しい気持ちにもなるんだ。
報われない恋なのに、もっと君を求めてしまうから。
もっと君と時間を共有したいって思ってしまうから。
「ねぇ手塚、ちょっと遠回りしてみない?」
ほら、また僕は、こうして欲張りになっていく。
「寄り道は………」
「いいから、ねっ」
小さい頃から教わるありきたりな言い付け。そんなものを律義に守る君も好きなんだけどね。
手塚がそれを言い終わらないうちに、細い手首を掴んで強引に引っ張った。