盾
□2010,12,25
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捨てる事が出来たらどんなに良かっただろう。
こんな厄介な想いを。
こんな、弱い自分を。
氷帝の王が聞いて呆れる。丁寧に包装された一つの箱を目の前に、クリスマスにひとり女々しく思い悩んでいるなんて。
今頃あいつはどうしているだろうか。そういえば、パーティーだ何だと部室で向日やジローと騒いでいた。しかしあいつの事だ、その約束をすっぽかして女の所にでも行っているかもしれない。
何処に居たって同じ事だ。俺と居る訳ではないのだから。
忍足の中に、俺は存在していないのだから。
立ち上がり窓を開ける。冷えた空気が音もなく部屋に侵入して来て、寒さに肌が粟立つ。
想いを懸けた雨粒も白く凍る事はなく、伸ばした手をしっとりと濡らして行くだけで。
ああ、やっぱり。
願うだけ無駄だという事か。
振り向く。テーブルの上の小さな箱に残像が揺れる。
忍足の顔が。
俺を呼ぶ低い声が。
あの空気が、
俺の中で溢れて、
「どうして―――」
何故人は、叶うはずのない恋にまで落ちてしまうのだ。
俺は、一体いつからこんなに弱くなったのだ。
誰もが幸福を願う夜。
広い部屋で、いつまでもひとり泣き続けた。