□lost in love with you.
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 忍足が、女とキスしてた。

 それが何だ?

 あいつが女を取っ替え引っ替えすんのは今に始まった事じゃねぇ。俺と付き合ってる時は他の女に手を出してはいなかったが。

『景ちゃんだけや』

 けど、あの言葉を信じてた訳じゃない。
 それなのに何で、

「景吾!!!!」

 何で、俺は今こいつに追い掛けて来て欲しかったんだ―――。

 息を切らした忍足が俺に追い付く。―――と同時に、強く掴まれた腕。振りほどこうとしてもびくともしない程だった。
 離さない、とでも言いてぇのかよ?

「っ……テメェ……離せ!!!!」
「景吾、聞いてや。今のは…」
「ハッ、何言い訳してんだよ? 俺は別にっ……」

 お前が誰とキスをしようと誰を抱こうと俺には関係ねぇ。違う、自分に言い聞かせてる訳じゃない。
 でも。

「関係な…………」

 次の瞬間俺を抱きしめた力の強さは、俺のこの脆い矛盾を壊すには十分だった。

「ごめんな、景ちゃん」
「っ………なん……」
「ごめんな…」

 何でだよ。何で、そんな優しい声で囁くんだ。
 何で、そんな優しくて弱い瞳で俺を見るんだ。

「さっきのは強引にやられたんや。もう誰にもあんなんさせへんから。な?」
「っ…………」
「…好きや」

 ………もう、だめだ。

「……………忍…足…」
「?」
「………キス、しろ」
「…景ちゃん……」

 息が出来ない。
 苦しい。
 心が、悲鳴を上げる。

「…愛しとるで、景吾」


 ああ、これ以上。
 こいつに溺れたくは、なかったのに。





       END


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