記念

□例えばこんな世界の誕生日
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僕無い世界。



これは、寝不足のまま虚の襲撃に赴き…昨日僕が消滅した12月20日。





彼女の日常は変わらず歩みを進める。



今日は、もう亡き俺の誕生日。



雛森は俺の自室でただ一人…呆然と空を眺めている。





「…何も見えない。」



雛森の悲痛な呟き。



「…っ…プレゼント…どぉするの…。」




ぽたりぽたり…空は快晴なのにな。




雛森の掌に握られた温かそうなスリッパが無造作に落ちる。





「…私…しろちゃんがいなきゃ…生きてけない。」




俺は桃に…生きて欲しい。そう思うのに、決して届かない叫び。



悔しく唇を噛んだ…その時だった。




机の下に転がったスリッパが何かに当たる音。





不思議に思った雛森が手を伸ばした先にあったのは…俺がクリスマスに渡そうと思っていた婚約指輪で。




指輪を覗いた雛森の瞳から涙が零れた。





「…ずるいよ。しろちゃん。」





…そうだ。
そうだった。


俺が指輪に刻んだ言葉は



I'm in love with Momo for all time in the future .




俺は永久に桃に恋をしている。






ゆっくりと指輪をはめた桃は、埋め込まれたダイヤに口付けを送る。




「…またね。…大好きだょ、…しろちゃん。」





強く生きる彼女を感じる僕無い世界
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