記念
□優しさ親しさ我が儘さ
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もうすぐ日付が変わる。
…そう6月2日の空を見上げて…彼女の一年の幸せを願って。
瞳をうつらと閉じたとき。
ふと、己の副官の言葉が脳裏を過った。
大切なのは、
(優しさ親しさ我が儘さ)
今日の日番谷くんはおかしい。
いつも眉間に住み着いているあの皺が消え、寧ろ白銀の眉は垂れ下がっているようだ。
私を優しく見つめる翠色の瞳をもう一度映して。
…やっぱり、今日の日番谷くんはおかしい。
「雛森、出掛けねぇか?」
6月3日早朝。私の自室を彼が訪ねて来たのは、きっと私の誕生日をお祝いにでも来てくれたのだろう。
だからまぁいいとして。
「駄目だょ、今日は午前中お仕事なんだ。けど、誘ってくれてありがとう。」
そう微笑むと、いつもなら終わる会話だが。
くぃ、と引っ張られた死覇衣に違和感を感じて。
不思議に思って視線を彼へと戻せば、ぽつりと一言遠慮気味に呟いた彼がいた。
「…今日はお前といたぃ。」
…上目遣いで私を見あげる彼は、…この時から変だったんだ。
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