愛玩少女

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「じゃあまた学校終わったら連絡するね!」
「ああ、気を付けて行って来るんだよ」
 沢山の生徒で溢れ返る登校時間の校門前、似ても似つかない"兄妹"はにこやかに手を振り合っていた。一人異質な学生服を着た少年は、少女の背中を見送ると人知れずその場を後にする。そして少女はといえば他の生徒に紛れて校舎へと消えて行った。
 けれど無邪気な少女は知らない――そのどこか歪んだ関係を遠くから見ている事しか出来ない、この胸の内など。

「この間はごめん!」
 それはいろはが教室に足を踏み入れたのと同時だった。朝一番だというのに余り落ち着きのないクラス、それを一瞬静まり返らせる程の謝罪がまさか自分に降り懸かるとは――そんな事を思いつつ、目の前でその赤い髪を垂らせる少女にいろはは恐る恐る声を掛けた。
「……あの、薫ちゃん?」
「本当は昨日謝りたかったけどいろはちゃん休んでたし、電話掛けても京介が出るし……」
「いや、あのね」
 全く以って読めない話にいろはは首を傾げる。彼女達が一体何を謝ると言うのか――薫達はよくも悪くも目立ってしまうため、今もクラス中から視線が注がれているというのに。いろはが返事に困っている中、一人で暴走する薫の頭を葵が軽く小突いた。
「アホ、いきなりそんなん言うてもわからんやろ?」
「取り敢えず場所を変えましょ」
 誰かさんが騒ぐから、そう言って紫穂は柔らかそうな髪を靡かせ教室を後にした。勿論いろは達三人もそれについていくしかなく、不服そうな顔をする薫を引っ張るのもまた葵だった。


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