愛玩少女

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 それはしとしとと静かに雨が降る午後の事だった。学生で溢れ返っていた道も落ち着きを見せ、人通りも疎らな道を皆本は走る。
 傘を忘れたから迎えに来い、と同居人であり仲間でもある三人の少女が言い出した時はいい加減に腹も立った。
「あいつら、あれ程今日は雨が降るって言ったのに何で持っていかなかったんだよ……」
 迎えに来いと言われたが、残念な事に今日はまだ仕事が残っているため傘を渡して直ぐに帰らなければならない。雨も土砂降りではないし、これくらいで甘やかしてはいられない。車での迎えも無しだ――そう皆本は計四本の傘を持ち学校へと向かう。その途中での事だ。
 ふと皆本の目に留まったのは、ビルの入口で雨宿りをしている一人の少女だった。彼女は困り顔で灰色の空を見上げ、小さく息を吐く。さらによく見れば彼女はどうやら薫達と同じ学校の生徒のようである。恐らく降り出さないうちに駆け出したはいいものの、帰宅途中で雨に捕まったのだと推測できる。しかし、皆本の関心はそれ以外のところにあった。
(――綺麗だ)
 こんな子供相手に何を思っているのか、はっとしたところで皆本は頭を振る。また綺麗といっても薫達と変わらない普通の子供で、強いて言うならばその姿に大事に育てられて来ただろう事が窺えるくらいか。
 遠巻きに彼女を眺めていた皆本は自分の差していた傘を見上げ、一考してから頷いた。


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