タユタ

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 厚い強化硝子が震えるのを京介は見逃さなかった。次いで巨大な力が襲い掛かり、硝子は震えるどころか粉々に割れてしまう――それは本当に刹那の事で、伸ばした手を触れ合わせるより、京介は自分といろはを守るのに漸くだった。
「……本当に君は昔から後先を考えないな、いろはに当たっていたらどうする?!」
「あんたがそんなヘマするわけないでしょ――兵部京介!」
 ゆっくりと京介が振り返ったそこには、大きな月を背負った不二子がいた。彼女はぎっと厳しく京介を睨むも、彼は口元に笑みすら浮かべている。だが、その目は真剣さを欠いてはいなかった。
「やっぱり現れたわね」
「僕は君に預けておくと言ったんだぜ?それに会いに来たくらいでガタガタ言うなよ」
「なら、人の庭に入って来ただけの覚悟はあるのよね」
「勿論リスクは承知の上さ」
 そのためにいろはがここにいるんだろうからね。それを言い終わらないうちに、攻撃を仕掛けたのは不二子の方だった。
 京介はそれを最大限の力で受け止め、流す。お陰で大した威力にはならなかったが、背後で少女が上げた悲鳴を聞く方が痛かった。


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