タユタ

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 言われなくても友達になる、そう思ったのは彼女が独りぼっちだったからなのかも知れない。
 
 あれから服を着替えもう一度やって来た薫達は、先程まで不二子や皆本がいた監視室で向かい合っていた。今あの二人はいない。別の仕事があるからと、薫達が現れた瞬間早々に立ち去ってしまったのだ。勿論、彼女を宜しく頼むと念を押して――紫穂は小さく息を吐いた。
「……何か納得いかないわ」
「そう言うても、ウチら任されてしもたんやで?」
「別に友達になれってことに納得いかないんじゃないわ……友達って立場をあわよくば利用しようとしてるところよ」
 友達になってやって、確かにそれは本心かもしれない。だが、本心が一つとは限らないのだ。
「彼女は兵部少佐を止められるかもしれないって期待されてここにいるんでしょ、でも大人は口を利いてもらえないから私達に泣きついてきたんじゃない」
 綺麗事だわ、と吐き捨てるように紫穂は言う。監視するようなこの部屋はパンドラの侵入を拒むものだろうが、確かに余りいい気はしない。葵がううん、と首を捻り始めた頃だった。
「――いいじゃん!」
 突然吹っ切れたように二人の背中を叩いたのは薫だ。そうして真ん丸に開かれた二人の目を、薫はすっきりした笑顔で覗き込んだ。
「だって、"友達"でしょ?」
「え?」
「全部話さなくてもいいじゃん。ばーちゃんや皆本の味方でも、京介の味方でもなくていいんだよ。あの子の味方でいることが、"友達"じゃないのかな」
「薫――」
 ガラスから窺える少女は、ただぼんやりと空を眺めている。その色のない表情に薫達は頷き、小さな部屋を後にした。


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