タユタ

□06
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『――……では、当分そちらで過ごされるということですか?』
「あぁ、勿論指示は出すし何か問題があればすぐに向かうよ」
 今までと特に変わらないさ、そう言いながら京介は学生服に袖を通す。パソコンの向こうの男の声は些か不機嫌なようだが、京介はそんなことなど気にも留めていない。それを感じ取ったのか、男は溜め息を吐いた。
『……もう少しあなたには組織の長としての意識を持ってもらいたいのですが』
「それは聞き飽きたよ」
『今回は話が別です。女王達の時にも我々は皆納得するのに時間を要したのに、次は――』
「ノーマルだなんて認められるわけがない、かい?」
 一瞬にして冷徹さを帯びた京介の声に、小言を言うつもりだった男は次の言葉を失った。
 突然組織の長がノーマルの少女を連れ帰り、暫く二人で過ごすなどと言われて誰が納得できるだろう。しかも本来なら自分達エスパーとは正反対の存在であるノーマルだ――彼女が何者であるかは知らないが、少佐が何も話さない以上、自分達にとってもその少女はノーマルの人間でしかないのだ。
 京介は画面の向こうにいる男のそんな心を知ってか知らずか、更に冷たい声で続けた。
「この件に関してはパンドラのことじゃない、僕個人の問題だ。君達であろうと口を出すことは許さない」
 勿論先程も言ったように組織の事はきちんと考えているし疎かにすることもしない――それだけを告げ、京介は一方的に通信を切った。
 

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