ハナミズキ

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 これは果てのない鬼ごっこだ。始まりはもうずっとずっと昔で、いつのことだったかは忘れても、あの瞬間あの時間を忘れたことは一瞬だってない。
 自分にとってそれは一生を捧げられるほどに大事な約束だ。
『大きくなったらお嫁さんにしてね』
 彼はいいよと微笑んで、私は彼に初めてのキスをした。それは幼い頃の精一杯の誓いの証だった。
 そうしてそれから幾年、その約束が果たされるときがとうとう訪れたのだ。今か今かとこのときを待ち侘びて、その想いは漸くふわりと可憐に花開く。
「あのときの約束通り、私をお嫁さんにしてください」
 それを所詮は子どもの戯れ言だなんて――私はあなただけをずっとずっと慕い想って来たのに。


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