愛玩少女

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 思えば、そのときにはもう正気でなかったのかも知れない。
「……皆本クン、本気なの?」
「はい」
 少女の背中が巨大な建物に吸い込まれるように消えたのを見届けてから、皆本は不二子の部屋へとやって来ていた。
 いろははここにはいなかった。となると、恐らく先程渡したカードキーの部屋にいるのだろう。
 どんな心地で待っているのだろうと、不意に思った。
「勝手にこんなこと決めて……一応この件はバベルで預かったじゃない」
 機密事項とは言え、その特殊性もさることながら、チルドレンを関与させたくない件であるという意味も含まれてそう指定されているのだ。だからこそ早く解決したいとも思ったし、それに――
「……管理官」
「何よ」
「兵部が隠しているものはもしかすると――あの子への気持ちなのではないでしょうか」
「……あいつが?」
 皆本は怪訝そうな表情で見遣る不二子に頷いて見せる。彼には思い当たる伏がいくつもあった。
 "僕のものだ"と言いながらこうして手放して、惹かれていると言いながら暴力を奮う。あまつさえ他の男を挑発しながら牽制するあの男の想いはどこにあるのか。
「……僕は知りたいのかもしれない」
「皆本クン」
「兵部は僕と彼女の接触を望んでいるようです。それでも今夜来なければ――きっといろはちゃんも諦めてくれる」
 皆本はそっと目を閉じた。これが大事なことであると、間違いないのだとそう言い聞かせるように。




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