頂き物絵&小説

□【頂き物】焦がれる。
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紅蓮の炎が、闇を照らす。
蔵の燃え落ちてゆくさまを、芹沢の傍らで見ていた。
(――いっその事、全て燃えてしまえばいいのに…!)
この胸の内にも、炎は荒れ狂っている。
(欲しいものを手に入れて、何が悪いの?)
(遊女を斬ったから何だというの? 何が悪いの?)
(芹沢さんの事をよく知ろうともしなかったくせに…!)
腕を引かれ、芹沢の胸元に倒れ込む。
「お前も飲め」
言うが早いか、芹沢は徳利を煽った。
鉄扇で顔を引き上げられ、氷のように冷たい唇が押し付けられる。
(――…っ!)
胃の腑へ落ちていく酒の味などわからない。
ただただ、熱い。
同時に、背筋を這い上がる快感に目を閉じた。
(ただ一つ、許されるのなら…)
芹沢の背に手を滑らせる。
(私だけを見て。あんな女じゃなくて)



〜end〜

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