頂き物絵&小説
□【頂き物】ひぐらし×コナン
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「藤堂夏美さんの旧姓は、公由夏美。雛見沢御三家の親戚です。古手梨花とも、友人でした」
「そうじゃったのか……」
阿笠が眉尻を下げて力無く言った。
当時を覚えている阿笠は、雛見沢出身者が疎外された風潮を克明に記憶していた。少しでも御三家と苗字の近い人間は弾かれ、いじめられ、それは酷かったのだ。
「スマンのぅ。名乗るのは辛かったじゃろう……」
夏美も結婚するまでは、相当辛い思いをしたに違いない。
だが阿笠の言葉に夏美はふるふると首を横に振る。
「私は、暁君がいました。友達も、始めはそういう目を向けてきたけど、私を理解してくれるようになって、守ってくれました。……暁君が卒業してすぐ、結婚してくれたお陰で苗字も変わった。だから私は、大丈夫なんです」
でも。
「でも、私……私だって、綿流しの時に戻ってきてたのに、魅音ちゃん達は少しでも早く学校に慣れるようにって元気づけてくれたのに……!…………私、何も出来なかった!」
ぽたりと、夏美の目から激情が零れた。
一度流れ始めると、堰止める事など出来ず、ボロボロボロボロと涙は溢れる。
夏美の白い頬が、濡れていく。
「どうしてこんなことになっちゃったんだろう?……魅音ちゃんやレナちゃん達、まだ見つからないんです。あの日行方不明になったまま、見つからないんです!……それなのにこの雛見沢を商売の道具にするようなマネ、許せなくて……!みんなの雛見沢が、壊されるなんて……!」
「止めにきたんです。地元の抗議活動だけでは足りないので、直接会って話をしようと。……しかし会長が」
「…………」
リリリリリリ。
夏美の告白。
赤坂の苦悩。
暁の思い。
様々なものが交錯する、静寂にして長い夜。
虫の音だけが、耳の奥で残響していた。