Silver

□愛する貴方
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「近藤さん?」
会話が途切れた事を不信に思い名を呼べば、暫くしてから言葉が帰ってきた。
「…たまには、一緒に入らねぇか?」
「へ?」
「あ、いや…嫌ならいいんだけどさ」
「い、嫌じゃねぇけど…」
急に言うからびっくりしただけだ、と返したものの、やはり躊躇する。
いや、夫婦なのだから当然――か?いや、それは関係ないか。
もうどうでもいいと、潔く服を脱ぎ捨てた。

扉を開ければ、白い湯気が外に抜けていく。
そう言えば、二人で風呂に入るのは数十年ぶりかもしれない。それこそ、ガキの頃以来だ。
「…でもさぁ…流石に狭くねーか?」
「そうか?」
アパートと言う事もあり、風呂場もあまり広くはない。
部屋自体はそこまで、と言う訳ではないが、湯船はどうしても密着してしまう大きさだ。
「何つーか…恥ずかしい…」
「何を今更。ほら、こっち来いよ」
怖ず怖ずと、言われた通りに傍へ寄る。明るい所で、と言うか情事の時以外で裸を見られるのは普通に恥ずかしい事で。
「痕、消えちまってるな」
「へ?…――っ!」
呟いたかと思えば、首筋を吸われた。鏡を見ると赤い痕が残っている。



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