Gold

□予想範囲外
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朝、目が覚めると一通のメールが届いていた。
それにはただ、『十時になったら迎えに来い』とだけ。
――土方だ、間違いなく。でも、こっちのアドレス教えてなかったと思うのに、どうやって調べたんだか。
正直、だるい。そう言えば、住所を聞いてなかった気がする。なのに迎えに来いと言うのか、この女王様は。
「どーしろってんだ…」
溜め息を吐いた時、メロディーが鳴って新しいメールが届いた事を知らせた。案の定、それは土方からだった。
『歌舞伎町内のアパート、“修羅”306号室』
とだけ書いてあった。
――待て、“修羅”だよな。それって確か、俺が住んでいるこのアパートの名前だった気がするんだが。
しかも、306号室はこの部屋の隣だ。よく耳を澄ませば、兄弟喧嘩らしき声も聞こえてくる。
そう言えば、もう直ぐ十時にもなる。一回、行ってみるかな。
一応、木刀をベルトに差しておいた。

外に出て、右隣の“306”と書かれたドアの前で立ち止まった。まだ、声は聞こえてくる。
恐る恐る、チャイムを押した。
――ピンポーン――
間の抜けた音が鳴り響く。と同時に、喧しい足音が迫って来た。
「近藤氏ぃー!」
開く扉、そして俺に抱きついてきたのは歳三だった。



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