Gold

□動揺
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特に何もする事がなかったから、土方の働いている姿を眺めていた。
まあ、黙っていればいい男、だ。土方は。女に人気があるのも解る気がする。
あんな性格してるから、それが目立たないんだろうな。もったいない。
思えば、初めて土方に逢ってからもう一週間も経つ。今までに何か暴動が起きた事はない。
もうそろそろ、警戒しなくてもいいと思う。土方が怯えている事は知っているが、慎重すぎじゃあないか。
「近藤氏」
暇になったらしい、トッシーが駆け寄ってきた。
「何だ、十四郎見てたの?」
「……まあな」
「本当、好きだよねぇ」
「はぁ!?」
トッシーの呟きに、思わず声が裏返る。
「な、何でアイツを好きにならねーといけねぇんだ!」
「だって、僕を見てる時と十四郎を見てる時とは目が違うもの」
「気のせいだ、気のせい」
「そうかな」
「そうだって」
ふーん、とつまらなさそうにトッシーは鼻を鳴らす。
俺がアイツを好きだなんて、悪過ぎる冗談だ。あんなひねくれた奴、友達ですら嫌だね。
――それでも一緒に居るのは、あくまでも暇だからで、他意はない。断じて、ない。



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