Gold

□女王様
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あの日、土方を庇ってからは唯一の居場所もなくなり、ただ家でぼんやりと毎日を過ごしていた。
何もする事がない――いや、そう言えばあった。土方に呼ばれていた事を忘れてた。
店の名前くらいなら、聞いた事がある。通行人に聞いていけば、大きな建物に着いた。
「…ここか…」
来たのはいいが、流石に男一人で入る勇気などはない。
どうしたものかと、暫く入り口に突っ立っていた。
「近藤さん…だよな?」
「はいっ!?」
いきなり声を掛けられ、慌てて聞こえた方を向けばそこには土方――と思われる男が立っていた。
「よかった、来てくれたんだ」
「お前…誰だ?」
土方ではない。土方はもっと乱暴な口調だし、目の前に居る男の顔は少し幼い。その上細身だ。
「…なーんだ、バレたか」
「は…?」
「ご名答。僕は君が探している人じゃあないよ。案内に来ただけです」
「…どうも」
なかなか、気が利く奴もいるモンだ。大方、土方から俺の話を聞いていて、その姿が見えたから来たのだろう。
「ああ、僕は土方…歳三。十四郎の双子の弟です」
「双子か…どうりで似てる訳だ」
その前に、アイツの名前を初めて聞いた。
「皆、見分けれてないんだけどね」
「…だろうな」



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