Silver

□白昼夢
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土方の想いが通じたのは、九月の事だった。
迎えた四日は、想いを寄せている近藤の誕生日。その日に、土方は告白する事を決めていた。
「近藤さん」
学校の帰り。二人きりになったところで、土方は足を止めて近藤の名を呼んだ。前を歩いていた近藤は同じように足を止め、何だと土方を振り返る。
「気持ち悪いと思われてもいいんだ」
「え?」
近藤は意味が解らずに思わず聞き返した。言葉が詰まったが、それでも土方は続ける。
「俺、ずっとアンタが好きだった」
返事は覚悟していた。どうせは断れるだろうと、拒絶されるだろうと。
沈黙に耐えられず、目を逸らした。泣きそうになってくる。
「……ごめ、ん……忘れてくれ」
思わずそう発していた。今すぐに逃げ出したいと思っていた。
「トシ」
しかし、名を呼ばれる事で顔を上げる。
「もういい。解ったから、そんな顔しないでくれ」
「近藤さん……?」
何かと思っている間に、急に温もりを感じる。それで、俺は今抱きしめられているんだと解った。
「な、に……!」
「ごめんな。今まで辛い想いしてただろ……?」
「……それ、じゃ」
「ああ。俺も好きだよ、トシ」



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