Silver

□戸惑いながら
1ページ/4ページ


とうに、泣き方など忘れてしまった筈、なのに。
どうして、涙が止まらない?

「あっ、くっ…」
侵入してきた熱量に漏れた声は、間違いなく自分のもの。
慰めているのか、慰められているのか。自分はただの道具なのか否か。
そんな事、もうどうでもよかった。ただ、体を繋げていられるだけで。
「近藤、さ…」
歪んだ意識の中、途切れ途切れに名を呼ぶと口付けをくれた。
交接よりも、何よりこの瞬間が幸せに感じる。偽りでいいから、愛を感じられる。
相手の想いを確かめる術などなかった。否、確かめなくても答えは解っている。
どうせ、自分はあの女の代わりでしかない。
「…もっと…っ」
快楽に全てを委ね、腰を振る。
いっそ、何も考えられなくして欲しい。
「っは、ぁ…」
何度も奥を突かれ、腸壁を擦られて、目の前が真っ白になる。
それでもまだ意識が途絶えないのは、絶頂を迎えていないからか。
「近藤さん…近藤、さ…」
うわ言のように、名前を呼び続けた。
体だけじゃ足りない。アンタの全てが欲しい。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ